パスワードを忘れた? アカウント作成
1286340 story
サイエンス

特定の空間を一時的に覆い隠し存在を消せる技術、米研究チームが実証に成功 29

ストーリー by reo
なるほど 部門より

ある Anonymous Coward 曰く、

「時を止めたかのように、ある一定時間、ある特定の空間を観察できなくする」ということに、米コーネル大学の研究チームが成功したそうだ。ただし「時を止められた」のは 40 ピコ秒 (40×10-12秒) というごく僅かな時間だけという。実験は光ファイバーケーブル内で行われたそうだ (WIRED の記事doi:10.1038/nature10695より) 。

CBC ニュースによると、「光の流れを操作するデバイス」を用いて光の流れを変え、特定の時間に発生した事象を検知できなくするというものだそうだ。

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • 図で書いてみる (スコア:5, 参考になる)

    by phason (22006) <mail@molecularscience.jp> on 2012年01月11日 16時25分 (#2079070) 日記

    図は等幅フォントで見てやってください.

    まず,プローブ光で何かを観察する,という状況を考える.光が対象に当たると測定できる.
    プローブ光として,一定波長の光を考えよう.図で書くとこんな感じだ.
    横軸が空間軸の進行方向,縦軸が波長(上が波長が長い)で,光が右に進んでいくイメージで捉えて欲しい.
    (論文では横軸が時間になってるけど,まあ原理は似たようなものだからこの説明で)

     
     
    --------------------
     
     

    同じ波長の光を照射してるんだから,同じ波長の光が右向きに飛んでいっている.
    さて,今回の実験では,これをある特殊な光学系に一度通す.すると出てくる光は,

           /
          /
         /
        /
    ----        --------
               /
              /
             /
            /

    と,時間とともに波長が微妙に変化する光に変換される.
    今この場の説明では光が右に進んでいくとしたので,この光を観測すると,初めは一定波長だった光がだんだん波長が短くなり(図で言うと下に下がる),ギャップで波長がジャンプして長くなり,そこから徐々に波長が短くなって元に戻る.

    さてこの光を,波長が長い光に対するほど屈折率が大きい(=光の伝達速度が遅い)ファイバーに通す.屈折率は通常波長依存があるので,こういう素材は普通にある.するとどうなるか?波長の長いところほど遅くなり,波長の短いほど速度が上がってどんどん進ので,(ファイバーの長さを適切に選べば)出てくる光は

        |
        |
        |
        |
    ----        --------
               |
               |
               |
               |

    となる.波長の長かった部分がどんどん遅れていき,波長の短かった部分がどんどん前に追いついていくわけだ.
    さて,こうなると,中央部分に光が存在しないギャップが生じることがわかる.すると,この短い時間の間なら,プローブ光の射線上に何が存在していたとしても観測者には見ることが出来ないわけだ.つまり,観測者からは見えない瞬間を作ることが出来る.要するにこういう事だ.

        |
        |
        |
        |
    ----        --------
               |
               |
               |
               |
           ↑
           ○「今のうちにダッシュだ!」

    うん,まあ,人が通るわけじゃないけど.

    さて,こうしてあるポイントをギャップが通過したら,今度は逆過程を行ってまたプローブ光を元に戻してやらないといけない.そうしないと,観測者からしてみたら「プローブ光を入射したら,一部波長が変化したあげくギャップまで開いていた」(=何らかの変化を検出した)なんてことになってしまうわけだ.

    そこでまず,上の図のギャップの開いた光を,波長が短い光に対するほど屈折率が大きい素材に通す.ギャップを作るときと反対になるわけで,波長の長い光ほどどんどん先に進み,波長の短い光はどんどん遅れる.というわけで,(長さを適切に選べば)出てくる光は

           /
          /
         /
        /
    ----        --------
               /
              /
             /
            /

    へと変換される.
    でもってこいつを再度,一番最初に使った「単一波長の光を,波長に傾斜がある光に変換する光学系」に入れ逆向きの変化を付ける.そうすると効果が相殺され,出てくる光は

     
     
    --------------------
     
     

    とまあ,最初のプローブ光が,まるで途中では何事もなかったかのように出てくる,というわけだ.

    • 大変分かりやすいような説明ありがとうございます。私の頭が悪いせいで「分かりやすいような」という但し書きをつけなければいけないのが残念ですが、「分かったか」といわれると「う~ん」というのが正直なところ。イメージとして「分かった気」にはなれるのですが。(笑)

      でも、素人目には、なんだか不思議で面白い現象ですね。

      --
      vyama 「バグ取れワンワン」
      親コメント
  • 関連ストーリーにこいつを入れるんだ.

    光の速度を操作して監視カメラの映像を編集するテクニック ? [srad.jp]

    原理は一緒……というか,以前のストーリーに出てきたこの原理を実際の物理系で実装しましたよ,というお話.
    #正直,実装できたからといってNatureに載るほど面白い現象か,という点には疑問があるけど.

    • by Anonymous Coward

      「光の速度を操作して」というより「光の遅延を利用して」が正しいような。

      • by Anonymous Coward

        まあ、波長を変えることで(物体中での)光の速度を変えてるから、間違いとまでは言えないかなあ。

        • by Anonymous Coward

          操作というと速くすることも可能という印象がある。

          • この実験では速くもしてますよ.というかそうしないと成り立たない.
            光の前半を加速,後半を減速で一時的にギャップが生成.その後逆の操作(前半を減速,後半を加速)によって元の繋がった光線に戻る.
            加速といっても当然,真空中の光速度よりは遅いんですが.

            *なめらかに光線を繋ぐために,実際には速度勾配を連続的につけてます.

            親コメント
            • by Anonymous Coward

              前半と後半の両方を操作する必要がある、というのがよく分からない。
              >光の前半を加速,後半を減速で一時的にギャップが生成
              後半を減速だけでもギャップ生成できるのでは?

              • >前半と後半の両方を操作する必要がある、というのがよく分からない。

                今の場合は単純に実験上のセッティング由来ですね.原理的にはギャップ作るだけなら後半だけ遅くする(もしくは前半だけ加速する)ので良いので.
                #その場合でも加速と減速の二つの操作は要りますが.

                今回の実験では光学系をいろいろ組み合わせることで,入射光が単一波長の光,出てくるのが波長が微妙に時間依存して間にギャップを持つ光,なのですよ.
                Supplementary InformationのFig. 2f が相当します.

                http://www.nature.com/nature/journal/v481/n7379/extref/nature10695-s1.pdf [nature.com]

                で,この出てくる光が,

                ・一定波長(1569nm)から1574nmに向けて徐々に波長が長くなっていく前半部分
                ・ギャップ(理想的には時間幅ゼロ)
                ・1564nmという短い波長から徐々に一定波長(1569nm)に戻っていく後半部分

                という二つになっています.
                このできあがった光を波長に依存して速度が変わる媒体に入れるんですが,後半が遅くなるような状況だと前半ももれなく速くなると言うか.

                親コメント
  • 事象欠損の前後の保存則さえ守れば
    • この場合は、監視者が連続的に光を監視しているつもりでも、途中でその光を操作することで
      問題の瞬間(40ps)だけ、その光では検出できないタイミングを作ったのだと思います。

      単純には光を空間的に迂回させればその空間は、その光では検出不能になりますが、
      この場合は光の速度を調整すること(曲げるの?)で時間的に光を迂回させているようです。
      書いていて自分でも解っていませんが。

      なので、何かの保存則を守るといった必要はありません。

      例えば部屋の空気の屈折率を物凄く高くして、目と鼻の距離でも光が伝わるのに10秒位
      かかるようにして置いた上で、この研究のトリックを使うと、数秒間なら唇を奪っても視覚
      では見つからないという芸当ができます。

      親コメント
  • 最近の光ファイバーってHBの鉛筆みたいに簡単に折れるんでしょうか。

  • by Anonymous Coward on 2012年01月11日 13時59分 (#2079001)

    時よ止まれ、お前は…何処だ?

    • by Anonymous Coward

      まぁそうなるには40psecというわずかな時間を人間が認識できるかという問題がありますが。

  • by Anonymous Coward on 2012年01月11日 15時33分 (#2079044)

    ザ・ワールドじゃなくてキングクリムゾン?

    • 実は部門名もスタンドを意識してのものだったのだが、誰にも気付かれない。
      --
      Hiroki (REO) Kashiwazaki
      親コメント
      • by Anonymous Coward

        ワラタけど、判りにくいよw

        • by Anonymous Coward

          ということで、考えることを止めた。

          #第二部 完

    • by Anonymous Coward

      ザ・ハンドで光を削り取ったことになるのかな。

      • by Anonymous Coward

        光削り取っちゃうと削られた分の光が居なくなっちゃうけど、今回の場合は、

        ・後ろの光にちょっと待っててもらって隙間に割り込む。
        ・用事が済んだら光にちょっと頑張ってもらって先に進んだ光に追いついてもらう

        だからちょっと違う気がする。

  • by Anonymous Coward on 2012年01月11日 15時34分 (#2079045)
    ありのまま今起こったことを話すとどうなるの?
typodupeerror

「科学者は100%安全だと保証できないものは動かしてはならない」、科学者「えっ」、プログラマ「えっ」

読み込み中...