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地球

海中への鉄分投入で藻を増やす手法、温暖化防止の効果やいかに? 63

ストーリー by reo
冴えたやり方なんて転がっちゃいない 部門より

taraiok 曰く、

大気中から過剰な CO2 を取り除けば地球温暖化の進行を遅らせることができる。その手法の一つとして、海に鉄分を投入して植物プランクトンの増殖させ、植物プランクトンに CO2 を吸収させる実験が行われてきたが (DOI: 10.1126/science.1131669) 、その結果が発表されて手法の有用性が検討されている (Nature News & Comment の記事ナショナルジオグラフィックの記事本家 /. 記事doi:10.1038/nature11229 より) 。

鉄分が投入された海域で増殖したプランクトンは CO2 をより多く吸収する。しかし増殖の結果、海洋生物に悪影響を及ぼす酸素欠乏状態を引き起こしたり、一部の生物に有害なタイプのプランクトンが増殖する危険性が指摘されていた。しかし、南極海に硫酸鉄 7 トンを投入した実験では発生したプランクトンの 50 % 以上が海底に沈んで堆積物に埋もれることが分かり、危険性の指摘は根拠が脆弱であることが示された。

しかしながら研究グループ曰く、かなり楽観的な想定に基づいたモデルでも現代の CO2 排出量の 10 % ほどしか回収できる見込みがないため、CO2 問題解決のための決定打とはなり得ない、とのこと。

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  • by HODA (35015) on 2012年07月23日 13時06分 (#2198363) ホームページ 日記

    CO2回収よりも漁獲量UP! のほうが魅力的。
    http://www.kobelco.co.jp/pr/1183662.html [kobelco.co.jp]

    • by Anonymous Coward on 2012年07月23日 13時51分 (#2198396)

      漁獲量を人為的にブーストというより、「磯焼け」を回復させて近海漁業を助けたいというところからスタートしているのですよ。
      鉄鋼スラグと腐植物質からなる海域施肥材料を用いて実海域での磯焼け改善効果を確認 [nsc.co.jp]

      # いかにも神鋼さんの独自開発みたいな書き方にびみょうにもにょる企業の人なのでAC

      親コメント
      • by Anonymous Coward

        そうそう、新聞とか大企業の発表って、共同研究の成果を主な研究を行った会社じゃ無くて、
        一番大きい(有名な)会社の名前を使いたがりますよね・・・

        #新聞にやられているのでAC

    • by Anonymous Coward on 2012年07月23日 13時42分 (#2198384)

      単純にこういう魚礁を、何十個・何百個と日本の海のあちらこちらに作ればいいと思うのだけれども、
      大々的に展開されていないのは費用対効果が見合わないのかな。
      それとも、鉄鋼スラグだとなんらかの環境汚染の懸念があるせいのかね。

      親コメント
      • by phason (22006) <mail@molecularscience.jp> on 2012年07月23日 15時29分 (#2198467) 日記

        >大々的に展開されていないのは費用対効果が見合わないのかな。

        それ以前の問題で,鉄入れようって話になったのが比較的最近なんです.

        そもそも,鉄不足な海域では他の栄養素がたっぷりあってもプランクトン(等)があまり繁殖出来ない,ってのが注目されるようになったのは1980年代後半頃です.

        それとは別に,1950年?かそれ以降ぐらいから,磯焼けという現象が日本の各地で見られるようになっていました.確か北海道あたりから始まったんだと思いますが,ある海域の海藻が大規模に枯れ,それに伴い水産資源も激減する,という現象です.これに関しては原因もよくわかっておらず,とりあえず余所から海藻もってきて植える,とか言う(今にして思えば)それはちょっとどうなんだ?という対症療法などが行われていました(実は今でも行われているところが多々ある).
        #まあ,また1-2年で枯れるんですけどね.

        で,1990年かそれ以降頃(前述の鉄不足の海域ではプランクトンが育たない,という研究後)に,北大(現四日市大)の松永先生だとか,東大の故 定方先生だとかが,「これはもしかしたら海水中の鉄分が不足しているからでは無いか?」と研究を始めます.
        日本は各地にダム&砂防ダムを造り,さらに河川の護岸工事を大規模に行っているので,海中への砂類(要するに細かな岩石類,ミネラル溶出の元)の流入が激減しており(砂浜の縮小とか,話題になりますよね),また河川周辺の森林や湿地帯(どちらも,生息する植物が酸を出し岩石を分解,ミネラルを抽出する)が開発されたことにより,海水への河川を通した金属イオン類の供給が減っている可能性があったわけです.

        そんな事を念頭に置いた調査の結果,鉄を豊富に含む河川の水が流れ込むはずの沿岸部にもかかわらず,遠洋並かそれ以下の鉄しか含まない海域が日本周辺で多数発生していることが明らかとなります.
        そこで前述の先生方(だとか,類似の研究をしている人や企業だとか)が,「磯焼けの原因は鉄分の枯渇では無いか?それを改善するために,沿岸部への鉄を用いた人工漁礁の投入が良いのでは?」という発想をし,研究を開始.
        ようやく成果が出て,実際に鉄スラグ魚礁で効果が出た,という結果が5年だか10年だか前ぐらいになります.
        つまりまあ,まだ新しい技術なわけです.さらに,実験数もそんなにめちゃくちゃ多いわけでは無いので「本当に効くの?」と疑問も持たれる.

        また,漁業関係者としてもそんなよくわからん変なものを投げ込まれるのには難色を示しますし(どんな業種にしろ,基本的には皆保守的なものです),鉄イオン濃度がとか見えもしないよくわからないことを言われても,と.

        実際の所,磯焼けの原因に関しても,
        ・海水温の局所的な増大
        ・ウニなど海藻を食べる種の一時的な繁殖
        ・海流の変化
        なども挙げられていて,恐らく実際にはこれらいくつかが複合したりしているのだろうとも考えられています(はっきりわかっていない).

        そんなこんなで,鉄スラグ魚礁は現状ではまだ試験段階です.
        どの程度効果があるのか?余計な有害物は溶け出さないか?効果の持続性はどんなものか?等,今後数年ぐらいは徐々に規模を拡大しながら検討していく,という位置づけだと思います.

        親コメント
        • by Anonymous Coward

          とても参考になりました。
          実際問題、鉄スラグから余計な有害物が溶け出さないかは、どのくらいの懸念があるんでしょうね。
          どこの鉱石を使ったかで、全然違う結果が出るだろうし、安く抑えるためには品質のコントロールが難しいのかもしれませんが。
          その不安さえ解消できるなら、ばんばんやってもらいたい。

      • いや半世紀前に、太平洋でたくさん漁礁作りましたから。ああ、日本海はあまりないか、対馬要塞があったので
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    • by Anonymous Coward

      銅スラグのほうが鉄分高いんだけど、使われないんだよなぁ
      #ヒ素を含んでいるからイメージ悪いんですわ・・・
      #微量だし、ガラス化しててほとんど溶けださないけど

      • by Anonymous Coward

        鉄分多い人を集めて海水浴したらどうだろう。

      • by Anonymous Coward

        >ガラス化しててほとんど溶けださないけど

        それだと鉄も溶けださないんじゃ?

  • あ、そこそこ (スコア:4, おもしろおかしい)

    by manmos (29892) on 2012年07月23日 13時41分 (#2198383) 日記

    時刻表を海洋投棄してもだめですよぉ。

    #少しは藻は増えるでしょうが…

    • by Anonymous Coward

      その場合、『藻』ではなく『萌』が増えます

    • by Anonymous Coward

      古い(鉄製の)鉄道車両を沈めれば!

    • by Anonymous Coward

      時刻表じゃ大して鉄分多くないよな
      もっと濃い本を沈めないと

      • by Anonymous Coward
        よーしパパ誤植だらけの貨物時刻表投入しちゃうぞ
  • by Anonymous Coward on 2012年07月23日 13時05分 (#2198362)

    凄い気がするけどどうなんだろう。
    5割回収できなければやらないとか?
    結局コストパフォーマンスの問題だけでしょう。

    • by phason (22006) <mail@molecularscience.jp> on 2012年07月23日 13時28分 (#2198376) 日記

      この手の海洋富栄養化に関しては,現在国際的な規制の対象となっています.

      1990年代から2000年過ぎ頃までにいろいろな実験が行われました.金属イオンが不足している海域での鉄散布やマンガン散布,貧窒素領域での尿素散布などですね.これらはCO2の回収や海産資源の増加などへの影響を調べる小規模実験だったわけですが,2000年代あたりからいくつかのベンチャーが商業化を目指し大規模化しよう,という事を計画し出しました.オーストラリアやフィリピンあたりでは国家レベルで商業化しようという動きもあったかと思います.

      ここで問題になるのが,周辺国への悪影響です.そもそも実験回数も少なく影響がはっきりしない部分も多い上に,プランクトンの異常増殖による害(赤潮とか)であるとか,生態系の変化による生息種の変化(とれる魚種が変わったり,生息域が変わったり),といった危惧もありましたし,何より貧栄養域ってのは陸から離れた場所ですから(陸付近は,陸上から様々なミネラル等が流れ込むので元々栄養的にはリッチ),実験や商業化後に悪影響が出ると,その被害を被るのは広い範囲の多数の国になる,という問題があります(自国領内だけで完結しない).
      そのため実験実施国に対し周辺国から異議が出されるなど,もめる状況も出始めました.
      #このあたりは,気象制御の歴史に似ています.

      そういった流れを経て,この手の海洋散布に関しては,
      ・実験研究レベルの散布は制限.審査あり.
      ・商業レベルの散布は禁止.
      というのがロンドン条約の枠組み内で決定されています.

      まあ,この手の環境エンジニアリングに関しては,今までいろいろやった事の大部分はろくでもない結果になったりしてるので,慎重に行くのは良いことだと個人的には思います.

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      • by Anonymous Coward on 2012年07月23日 14時18分 (#2198422)
        ご自身の日記に触れないのは謙虚が行き過ぎな気がします。:)
        これを読むだけでも無駄な煽りコメントが減ると思われますし。
        phasonの日記: 南氷洋における海洋肥沃化はかなりの炭素を海底に沈める [srad.jp]
        親コメント
      • 沖ノ鳥島沿岸と周辺にこの鉄スラグブロックをドカドカ打ち込んで、沖の地理島が沈まないよう我が国の領海維持に役立てたらどうでしょう

        ここまで南だと、他国の漁場には影響を与えそうもない気がしますが

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      • by TarZ (28055) on 2012年07月23日 14時17分 (#2198420) 日記

        この手の手法を実際に二酸化炭素固定のために大規模に行おうとするなら、周辺環境への予想外の悪影響が出るリスクの考慮はもちろんとして、そもそもリンや窒素のような元素が堆積物から分離・リサイクルされないと美味しくないような気が。

        今回の実験では、炭素と一緒に有用な元素も珪藻に取り込まれているようですが、長期的に見るとリサイクルされる(堆積物からPやNが海中に溶け出す)のでしょうか。

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        • by phason (22006) <mail@molecularscience.jp> on 2012年07月23日 14時51分 (#2198441) 日記

          >リンや窒素のような元素が堆積物から分離・リサイクルされないと美味しくないような気が。

          恐らく分離はかなり難しいと思います.
          何せNやPはC共々分子内に取り込まれていますので,それを分離しようとなると結構難しい気が.

          今の所Fe等の海洋投入で想定されているのは,濃度の低い硫酸鉄(等)の水溶液をちょろちょろと継続的に垂れ流して,その海域で継続的に藻類を発生させよう,というものです.
          この場合の利点は,鉄溶液さえ流し続ければ後は手を加えなくて良いというお手軽さなのですが,ここからPやらを回収しようとするとプランクトンの沈降物を回収して何かしないといけない,という事になるので,結構面倒くさい気がします.面積もそれこそ100km四方とか大きいですし.

          その場で魚育てて水揚げ,食った残りを……ってやると炭素が海底にあまり行かないんで駄目ですね.どうしたもんだか.

          ものすごい長期的にはリサイクルされるんですけどね.海洋に沈降したプランクトンが次第に分解してポリリン酸とかアパタイトになって,それが造山運動(とか沈み込み帯経由)で地上に出てくるという.何億年後だ,って期間になっちゃいますが.
          #確かリン鉱石の起源がそんな感じだった覚えが.

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      • by Anonymous Coward on 2012年07月23日 15時18分 (#2198460)

        お金かけて人工的に散布しなくても、温帯地域なら、河川の水源地域に、木材目的の針葉樹ではなく、広葉樹の落葉樹林を作れば、十分賄えるという話があります。河川の水源地域が金属イオンを吸収しにくい針葉樹ばかりになったので、落ち葉による金属イオンの供給が減ってしまって、磯焼けするというのが、根本問題です。海の環境を改善するには、山の環境を改善する必要があるのです。変な環境破壊もなく、一番自然な方法です。

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        • by phason (22006) <mail@molecularscience.jp> on 2012年07月23日 15時37分 (#2198473) 日記

          今回の実験で検討されているのは,そういう「比較的鉄分がある領域」であるとか,「鉄分は少ないけど局所的な領域」では無く,もっと大規模に鉄分が欠乏している,遠洋(大陸から遠く離れた部分)のHigh Nutrient Low Chlorophyll海域と呼ばれる領域です.

          こういった領域は,それこそ一辺が1000km単位の広さで鉄分が枯渇しており(南極域なら,南北1000kmで南極大陸一周とかそんな領域),山の環境とかそういうレベルではありません.
          #何せ近くに山(というか陸)が無い.それが根本的な原因.

          日本の沿岸で起こっている鉄分の欠乏などの問題はまあ言ってしまえば局地的な問題で,漁場がいくつか壊滅するかしないか程度の問題なわけですが(もちろん現地の人にとっては大災害ですわな),HNLC海域というのはそれこそ日本の沿岸全てが丸ごと数個分入ってしまうような膨大な鉄欠乏領域です.
          で,「これだけだだっ広い領域にプランクトンが少ないんだから,ここに鉄流し込めばスゲェプランクトンが増えてありがたいんじゃね?」ってのが今議論している実験です.

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        • by kalb (19692) on 2012年07月23日 22時28分 (#2198652)

          オフトピ気味ですが局所的に(東北の1つの湾内で)やってみようと言うプロジェクトはあります。
          http://www.mori-umi.org/ [mori-umi.org]
          ヨーロッパ辺りで理論的に可能性があると言う論文が有ったってのをどこかで読んだ(かTVで見た)気がしたのですが
          元ネタを見つけられませんでした。

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  • by Anonymous Coward on 2012年07月23日 14時03分 (#2198409)

    温暖化防止に関して過大な期待を抱くべきでは無いだろうが,海洋酸性化防止の効果は望めないのだろうか?
    酸性化の悪影響の大きい海域に適用するとか出来ないの?

  • by Anonymous Coward on 2012年07月23日 14時08分 (#2198413)

    鉄買っとくか

    • by Anonymous Coward

      さしあたってJR東日本あたりでいいんですかね

  • by Anonymous Coward on 2012年07月23日 15時13分 (#2198456)

    一石二鳥かもしれませんね
    無害なものを選別する必要はあるでしょうけれども

  • by Anonymous Coward on 2012年07月23日 15時23分 (#2198464)

    植物プランクトンの増殖させ
              ↓
    植物プランクトンを増殖させ

    かな?

  • by Anonymous Coward on 2012年07月23日 15時43分 (#2198476)

    いいこと考えた!
    ハブ害が問題ならマングースを放てばいいんじゃね?

    • by Anonymous Coward

      人害が問題なら人外を放てばいいんじゃね?

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ハッカーとクラッカーの違い。大してないと思います -- あるアレゲ

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